内面的価値 見直そう ダライ・ラマ14世

内面的価値 見直そう ダライ・ラマ14世
毎日新聞 2010/05/03
http://mainichi.jp/
私たちは内なる価値の重要性を学ばなければいけない。慈悲や愛といった内面にある価値は内なる平和を基礎にしている。お金は失望、嫉妬、競争をもたらし、猜疑心を高め、人間同士の友情を壊す。「自分は不幸だ」と感じ、酒や麻薬に依存し、欲求不満が高じ、怒りっぽくなる。それは自殺や周囲の命を奪うことにもつながると思う。


 日本の話をしよう。私が最初に訪日した1967年、その当時、日本はすでに物質的に恵まれた産業国家であり、仏教信仰を含む豊かな文化遺産も発展させてきたという印象を受けた。私は日本の友人たちに現代の物質的価値と伝統的な精神的価値のバランスをきちんと取るべきだと助言した。「そうしなければ、早晩的に しかし、精神的に大きなショックを受けるだろう」と。

 ――自殺の増加は現代社会の脅威だと考えるのか。
 極端な物質主義的思考は、とても危険。それは道徳的な倫理観を重視しない。今の経済危機は強欲な拝金主義と投機的行為の結果だ。
 頑張っても自信を持てないならば、周囲に頼っても決して問題ではない。仏陀自身は托鉢した。恥をかきながら生きるか、恥を許せず自殺しようと迷うなら、恥を選んだほうがいい。何かで失敗し、不幸にも物ごいになっても、それは恥でも何でもない。私たちチベット人は(亡命し)インドに来た時、食べ物を求める物ごいだった。だから、失敗しても、自ら命を絶つ理由などない。

>頑張っても自信を持てないならば、周囲に頼っても決して問題ではない。仏陀自身は托鉢した。
「頼り、また助け合う」ことは大切なことですね。