ダライ・ラマ後にらみ、 中国が次々布石 公認の高僧抜擢

ダライ・ラマ後にらみ、 中国が次々布石 公認の高僧抜擢
朝日新聞 2010/03/15
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 中国当局が、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世(74)の死後を見据えたとみられる動きを活発化させている。当局公認のチベット仏教ナンバー2、パンチェン・ラマ11世(20)を国政助言機関の全国政治協商会議(政協)委員に抜擢。高官らからは「ダライ・ラマ後」の言及も目立ち始めた。
 パンチェン・ラマ11世は今年2月、中国仏教協会副会長に就任したことも確認されている。正統性を強め、求心力を高める狙いがあるとみられ、ダライ・ラマ14世の死去後をにらんだ当局の布石と受け止められている。
 チベット仏教の高僧は「転生霊童」に引き継がれる形をとる。1989年にパンチェン・ラマ10世が死去した後、中国当局側が現在のパンチェン・ラマ11世を転生者に認定し、即位させた。ダライ・ラマ側が転生者に選んだニマと呼ばれる少年は行方不明となり、今も行方が明らかにされていない。一方、1959年のチベット動乱でインドに亡命したダライ・ラマ14世は、中国内のチベット人社会で大きな影響力を維持するが、その後継者問題は不透明だ。チベット自治区のバマチリン主席は7日の記者会見で、ダライ・ラマの転生者選定について「ダライ・ラマはまだ生きている。死ぬのを待ってから考えればいい」と余裕の姿勢を見せた。
 共産党中央統一戦線工作部の朱維群副部長は記者会見で「ダライ・ラマも今年で75歳だ。生きているうちに正しい選択をすることを望む」と14世の高齢を皮肉った。ある党関係者は「絶対的なカリスマを持つダライ・ラマさえいなくなれば、問題はすべて解決する」とさえ話す。